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「ダイイング・アイ」読書レビュー

 

ダイイング・アイ (光文社文庫 ひ 6-11)

ダイイング・アイ (光文社文庫 ひ 6-11)

 

 

あらすじ

雨村慎介は何者かに襲われ、頭に重傷を負う。

犯人の人形職人は、慎介が交通事故で死なせた女性の夫だった。

けがの影響で記憶を失った慎介が事故について調べ始めると、周囲の人間たちは不穏な動きを見せ始める。

誰が嘘をつき、誰を陥れようとしているのか。

やがて慎介の前に妖しい魅力に満ちた謎の女が現れる。

女の正体は、人形職人が蘇らせた最愛の妻なのか?

 

 

 

2019.3.からWOWOWで連続ドラマ化もされた作品です。

 

東野圭吾さんの作品といえば、これまでもたくさん映像化された作品があり、
なんとなく、「東野さんらしさ」のような感覚を読む前から抱いて読み進めてしまったのですが。

 

容疑者Xの献身

容疑者Xの献身

 

 

 

白夜行 (集英社文庫)

白夜行 (集英社文庫)

 

 

 

人魚の眠る家 (幻冬舎文庫)

人魚の眠る家 (幻冬舎文庫)

 

 

 今回読んだこの「ダイイング・アイ」、他の東野作品で名前が挙がってくるような作品たちと比べると、なにかテイストが異なります。
東野作品って、謎がたくさんあっても、その謎が明かされていくにしたがって、爽快感というか、そういうことだったのか!という気持ちよさがあったり、登場人物の悪事に関しても、人間的な感情の絡んだ酌量の余地のある背景があったりするんですが・・・

 

ないんですよね、この「ダイイング・アイ」の登場人物たちには、それが。
なんとなく、被害者の美菜絵以外、みんな悪者。

美菜絵の夫・人形作家の岸中玲二でさえ、妻を亡くした身であることを考慮しても、行動がエスカレートしていく様は不気味ですし(なんとなく「人魚の眠る家」を連想させる雰囲気でした)、まずは冒頭の美菜絵視点の描写の中でさえ、あまりいいように紹介されていない印象です。

主人公の慎介、それを取り巻く登場人物皆が、自分の利益で動いています。

一人ひとりのエゴが、それぞれの悲劇を生み、それらが重なりあい積み重なっていって、雪だるまのようにどんどん悲劇を巻き込みながらみんなで奈落の底へ落ちていく・・・そんな印象で読み進めました。

 

ので、読み終わった後の爽快感は、ないです(笑)

読んでいる間、読み終わった後も、なんとも後味の悪い感じなんですが、

結末が非科学的というか、少しホラー的な結末を迎えるのですが、

不思議と、人間の心理としては、あぁ、でも現実の社会って、こんな側面が大きいよな、と変に納得してしまうのも事実です。

 

作品名にもある「アイ」、目、ですね。

事故の被害者、美菜絵の、なんで自分が死ななければならないのか、という、怨念のこもった「目」が、作品全体を通して重要なカギとなっています。

思いは目に現れると私自身感じていて、満面の笑顔であっても目が笑ってなければ恐怖を感じたりしますよね。
目には感情が宿り、その感情が大きければ大きいほど、周囲に伝わる影響も大きくなるのかもしれません。

 

 

個人的には、ちょっと非科学的な要素が要所要所、それも重要なところで使用されてモヤっと納得いかなかったり、肝心な「謎の女」瑠璃子の、動機の部分がなんとなくボヤっとしてたりする印象が残り、読んだ後の爽快感があまりない作品ではありましたが、

ちょっとテイストの違った東野作品を楽しんでみるにはよい一冊ではないでしょうか。

 

 

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